感想
ビートルズの約8時間にも及ぶ長編ドキュメンタリー”Get Back”を鑑賞しました。
ビートルマニアには堪らない!観るべき!といった内容でした。
なぜなら今まで憶測で語られがちだった活動終期のビートルズの真の姿を見ることが出来るからです。
数年間共に支えあってきたメンバーの関係性は決して「仲が悪くなった」と一言で済まされるものではなく、様々な感情や人間関係、そしてメンバーそれぞれのキャラクターが見えてきました。
良いドキュメンタリー映画を見たと同時にまたビートルズの見方が変わる、さらに好きになりました。
しかし流石に8時間は腰が重い。。。という人向けに見所をピックアップして10分程度に要約しました。
Part1:第1〜7日目
ポールの憤り
Get Backセッションはビートルズの活動でも後期のチームとしての一体感が無くなってきた、解散の雰囲気が漂う、もっと言えば不仲になってきた時期に行われたものである。
ジョンは意見をほとんど主張しなくなり、ポールが実質的なリーダーとしてバンドを率いていく。
そんな中あるシーンで「なんで君たちは何も意見を言わないんだ!」「自分ばかりが君達を否定しているような気分になる」と受け身になっていたメンバーに激怒する。
ジョージハリスンの脱退
ポールやジョンから度々、「こんな感じでギター弾いてくれ」とか「そうじゃない」と注文が入る。
そんな中、友人のエリッククラプトンと比較され「あいつなら出来るぞ」みたいな事を言われる。
これはかわいそう。そして弁明としてジョージは「速弾きだって最近は出来るようになってきたんだ」とか「確かにクラプトンのようなギターは弾けないが、それとは違ったニュアンスのギターが弾けるんだ」みたいな主張をする。
ジョージには彼なりの趣向があり、ギターを弾いているようだ。その証拠に”I Me Mine”などいくつか自作の曲をセッションに持ってきている。
だがその曲に対してセッションで揉まれる事はなく、ジョージ一人で完成に向けてブラッシュアップをしている。
何だかソリが合わないといった感じで意見は主張するもののジョージは孤立していってしまう。
とうとうセッション中、ポールに言い負かされてしまい、「バンドを脱退する」と言い出ていってしまった。
その行動に対してジョンレノンは冷酷にも「クラプトンを新しいギターとして入れろ」と言い放った。
Part2:第8〜16日目
トゥイッケナム・スタジオからアップル本社内スタジオへ
セッション開始当初から環境に不満を感じていたメンバー達。
ジョージが飛び出していった事もありセッションの環境も変えることにした。
場所は彼らのホームとも言えるアップル社内だ。
エレピパート:ビリープレストンの参加
ジョージも復帰し曲制作も徐々に形になってきた。
しかし何か足りないという雰囲気のメンバー。鍵盤の音が必要と感じたようだ。
そこでジョージの知り合いである鍵盤奏者ビリープレストンを招き、エレピパートを追加した。
後に5人目のビートルズと呼ばれる彼の参加により、セッションは好調になってくる。
楽曲はブラッシュアップされ、何よりもメンバーそれぞれが楽しそうな表情を浮かべているのだ。
最終日のショーを行う場所決定:アップル社屋上
こちらも楽曲制作と同じくらい迷走していた。
セッション開始時からこのプロジェクトの最終ゴールとしてライブパフォーマンスを行う予定であったが場所が決まらなかった。
スタッフ陣営があらゆる提案をしてもメンバーは首を縦に振らない。海外でのショーなんてもってのほかという考えのようだ。
しまいには「本当にライブを行うべきか?」という議論にまで発展した。
最終的に彼らは現在、セッションレコーディングを行っているアップル本社のビルの屋上でショーを行うことに決めたのであった。
Part3:第17〜22日目
本当にルーフトップコンサートをやるのか?
またこの問題が再浮上する。楽曲制作が順調になってきたといってもまだ曲数は足りない。
レコーディング風景をドキュメンタリーとして撮ってきたにも関わらずエンディングが無いのは困ると嘆く製作陣。
「時間的に無理だろう」と言うジョン。「屋根の上でなんて演奏したくない」と言うジョージ。なんとか意見をまとめようと動くポール。
そんな中、今まであまり自分の主張をしてこなかったリンゴが「僕はやりたい」と呟く。
そんなリンゴの一言で「じゃあやろうか」といった雰囲気に変わる。ジョンも前向きのようだ。
ルーフトップコンサート
紆余曲折あったがショーは決行された。
ビートルズには間違いなく終わりに近づき、その事をメンバー全員が薄々感じてきている。
そんな複雑な感情が渦巻く1ヶ月間のセッションの末、音楽的熱量がルーフトップで爆発する。
演奏中の彼らは何だかんだ言って楽しそう。人前でのライブを封印してから数年ぶりのギグであった。
突如街中に響く音楽に戸惑う人々、いくらビートルズと言えども「うるさい!非常識だ!」という市民の声も記録されている。
しまいには警察が出動し「騒音の苦情が来ているから今すぐ止めるように」と命令を受ける。
しかしそれには真摯に対応しない関係者達。とぼけたような会話を投げかける。
そしてとうとう屋上まで登ってきた警察によってギターアンプの電源が切られてしまう。
だがすぐにスイッチを入れ直すジョージ。そしてポールは警察を揶揄するような替え歌を歌う。
なんかドラマチックなロックヒストリーだなぁと胸がいっぱいになった。
ゲットバック・セッションから生まれた作品達
アビーロード
まず一つ目がこのセッションでデモ状態だった楽曲群を中心に制作されたアビーロードだ。
最終的なレコーディングは後にアビーロードスタジオとなるEMIスタジオとトライデントスタジオで行われたがゲットバック・セッションがこのアルバムの誕生に大きく関わっていることは間違いないだろう。
レット・イット・ビー
そして二つ目がレット・イット・ビー。
ビートルズ解散直後に出た作品でメンバーの意思があまり通っていない総集編と軽視される事もある作品であるが、ゲットバック・セッションで完成され、レコーディングされた楽曲が収録曲となっている。
ゲットバック・セッションが作品として形になったという意味では必聴のアルバムである。
またこちらのアルバムはリミックスに不満を持っていたポールが再編集版「レット・イット・ビー…ネイキッド」を後に再リリースしている。
聴き比べするのもオススメだ。また収録曲も若干異なるのでやはり両方聴いて欲しい。個人的にはルーフトップコンサートでも演奏してた”Don’t Let Me Down“がネイキッドの方にしか入っていないのが大きい。
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