アルバム解説 – 聖なる館(Houses of the Holy) – レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)

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ツェッペリンが奏でる異色のハードロック

ツェッペリンの売りのハイトーンかつ激しいギターは影を潜めた。

代わりに煌びやかなサウンドスケープが広がる。

そしてレゲエ的な要素があるとかラテン的なんて言われたりもするこの”Houses of the Holy”はハードロックを聴こうという人にはお勧めできないが、その源流にあたるサイケロック好きやそこから派生したプログレ好きには刺さるのではないだろうか。

なにが言いたいかというと本作はツェッペリンのキャリアの中でも異色の作品であるということだ。

だからこそこのアルバムを通してしか見れない彼らのサウンドがあるのだ。

邦題の「聖なる館」というタイトル通り、ミステリアスかつ美しく、少し不気味な世界観のアルバムである。

The Song Remains the Same

疾走感のあるイントロ。このサウンドがなんともこのアルバムの色を表してくれている。

煌びやかなギターと音像がぼやけた、浮遊感のあるロバートのボーカルだ。

この曲が刺さったならこのアルバムは好きだろうし、これが嫌いなら、このツェッペリンはあなたの好みではないかもしれない。

そしてレッドツェッペリンが後にリリースする彼らのドキュメンタリー映画、そしてライブ盤のタイトルが同名の”The Song Remains the Same”なのだ。

それくらい彼らにとって思い入れのある曲であるのだろう。日本語にすると「変わらない音楽」という感じだろうか。

The Rain Song

劇伴のような楽曲だ。「雨の歌」と名付けられたこの曲は雨上がりを彷彿とさせる世界観を持った前向きな「愛の歌」だ。

また、歌詞はあるものの控えめで、壮大な自然的なサウンドスケープが表現の中心となってる様に感じる。

曲展開も凝られており、思想的な背景には同時代のプログレの影響があったりするのかもしれない。

Over the Hills and Far Away

イントロはジミーペイジのプレイする有名ギターリフの一つ。

また雰囲気として前曲の”The Rain Song”との繋がりも感じることが出来る。さらに言えばアルバム独自の世界観を構築するメインを担っているとも言える。

そして面白いのが後半の曲展開は今までのハードロック色が強いことだ。

ここで本作が「レッドツェッペリンの作ったアルバムである」という唯一性を確認することが出来る。

ここまで3曲続けて聴いてきて歌詞も含めて負の感情が全く無いユートピアというか天国のような世界観に包まれている。

The Crunge

一言で言えば不思議な曲といった感じ。

私個人的には向井秀徳が率いる”ZAZEN BOYS”みたいだなと思っている。

それみたいなカッティングギターとベースとドラムの絡みなので是非聴いてみて欲しい。賛同してくれますかね。

一応、この曲はファンクと言われたりするらしいが私のファンクへの知見が甘いせいかファンクって感じよりは”ZAZEN BOYS”ですね。

また曲名の”Crunge”という単語は全く見慣れないが英語圏のスラングで、うんざりする嫌気がさす恐怖で身がすくむこびへつらう、といった様々な意味があるようだ。

歌詞を見ても「あの女の子を狙ってる」みたいな歌詞でどの意味が当てはまるのかはっきり分からない。

雑に言えば「変な曲」その変さを肯定すれば「トリッキーで面白い曲」だと思う。

どちらにせよ今までの流れをぶっ壊すような変な曲が4曲目にきたのは間違いない。

Dancing Days

個人的にこの曲が最も本作「聖なる館」の異色さを体現している楽曲だと思う。

ギターリフが最高にメランコリックというか、とにかく独特なのだ。

しかもずっと聴きたくなるような中毒性もある。そこにロバートプラントの妖艶というか脱力感のあるボーカルが入ってくる。

ダンスの曲であるから是非「この曲で体を揺らすなら」を意識しながら聴いて欲しい。

今までの概念に無かったミドルテンポの不思議なダンスが出来るでしょう。

D’yer Mak’er 

この曲が先に述べた本作のラテン的な要素の中心を担う楽曲だ。

レゲエの曲と言われるこの楽曲と曲名の関係性について説明する。

まず”D’yer Mak’er ”は短縮せずに言うと”Did you make her ?”である。そしてこれをイギリス人が発音すると「ジャマイカ」と聞こえることがあるという。

そこから次のようなジョークが生まれた。

A:「妻と喧嘩したんだ。ジャマイカに行ってしまったんだよ」

B:「ジャマイカ?」

A:「(「D’yer mak’er!?」と聞かれたと思って)いや、彼女が自分で出て行ったんだよ」

つまり”Did you make her ?”とは「君のせいで彼女は出ていったの?」となるがAはそう聞かれたと勘違いしたというジョークである。

そしてこのストーリーを歌詞に落とし込んでジャマイカ風のレゲエ調にした楽曲がこのD’yer Mak’er なのだ。

No Quarter

演奏時間が約7分にも及ぶ超大作である。

物語的な歌詞の世界観と”No Quarter”「容赦が無い」という意味。

そして耳に残る「どんよりしたダークなリフ」がフェードアウトで終わるのが、この「物悲しいストーリー」が続いていくこと予感させる。

そんな情景が見える楽曲だ。

The Ocean

タイトルを直訳すると「大洋」だろうか。

このギターリフもとても有名であるがジミーペイジ的、ツェッペリン的に海を音楽で表現するとこうなるのかと思うと興味深い。

彼らの描くオーシャンは爽やかな感じではなく情熱的な暑苦しい感じなのだ。

歌詞も賑やかである。海賊か?と思うほど。そしてそこにバンドメンバー四人を投影しているとも取れるのかもしれない。

最後に

冒頭に「異色のアルバム」と述べたがその異色さとは何なのか全曲レビュー後に改めて考えてみる。

まず「ツェッペリンの奏でるハードロック」という枠を外れてるのは間違いないだろう。

そして異色さを構築する要素に「収録曲それぞれが持つトリッキーさ」があると思った。

楽曲それぞれの世界観が決して同一の世界線上にある訳でなく、奇妙な世界の集合体が「聖なる館」であったのだ。

また2014年にはリマスターに加えて様々なリミックスが入ったデラックス版が出ているのでそちらを聴くとより深くまで本作を味わうことができる。

Summary
アルバム解説 - 聖なる館(Houses of the Holy) - レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)
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アルバム解説 - 聖なる館(Houses of the Holy) - レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)
Description
⭐️A面 永遠の詩 - The Song Remains the Same レイン・ソング - The Rain Song 丘のむこうに - Over the Hills and Far Away クランジ - The Crunge ⭐️B面 ダンシング・デイズ - Dancing Days デジャ・メイク・ハー - D'yer Mak'er ノー・クォーター - No Quarter オーシャン - The Ocean
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Noel-Marble
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