デビッド・ボウイの伝記映画「STARDUST」
本記事は映画「STARDUST」の鑑賞レビューとなっています。
どんなストーリーなのか、ざっくり紹介していきたいと思います。
これを読めばボウイの音楽性だけでなく人としての魅力がわかるはず!
もちろん映画のネタバレを含みますのでどのタイミングでこの記事を読むかはおまかせします。
ジギー・スターダストとは
ジギー・スターダストとはデビッド・ボウイの持つペルソナであり、彼の持つ人間性、キャラクターの1つです。
地球に落ちてきた異星人というキャラクターです。そのため地球人の我々にとっては見慣れない、奇抜なファッションをしています。
あらすじ
1971年、「世界を売った男」をリリースしたボウイ。
そして本作は今でこそ名盤と評価されるがリリース当初は悪評だらけの駄作として扱われていた。
周りからは難解で意味不明な歌詞だと吹聴されていた。そしてヒットした前作「Space Oddity」のような作品を作れと言われる始末。
そんな状況下で物語は進んでいく。
アメリカツアー
イギリスではミュージシャンとしてある程度、名が知れてきたボウイ。
そんな彼にアメリカツアーの誘いが来る。当時、ミュージシャンはイギリスで売れたあとはアメリカでもう一度売れなくてはならなかった。
そしてボウイももれなくアメリカでの知名度を上げるべくツアーに臨む。
しかしツアーは失敗に終わる。
しょぼいバーでの演奏。しかも誰も聴く耳を立ててくれなかったり、ラジオに出演したり、雑誌のインタビューを受けても自分のキャラが受け入れられなかったりと何もうまくいかない。
そして普段はミュージシャンとして強気な姿勢を見せるボウイも一人になると悲しみに更けてしまう。「自分はミュージシャンとして終わってしまったのか」と。
そんな中、プラベート面でも彼に追い打ちをかける出来事が起こる。
兄の病気
アメリカツアーに苦戦しているさなか、兄のテリーが精神病になってしまう。
精神病棟で過ごすテリーは痛々しく描かれており、弟ボウイは定期的にお見舞いに行く。
そんな中、母からは「ウチは精神を病む家系だから」と告げられる。
アメリカツアーで追い詰められている今の自身の状況がテリーと重なり「やがて自身も精神を壊すのではないか」と恐れるようにな。
ジギー・スターダスト誕生の経緯
今作ではデビッド・ボウイこと本名「ジョーンズ」がミュージシャンとして自身を表現していく中でデビッド・ボウイというアーティストの自分と「ジョーンズ」という自身のプライベートな部分の乖離が描かれていました。
デビッド・ボウイとして活動してる自分だけを周りは認識し評価するけど本当の自分でないと感じるジョーンズ。
そして大失敗に終わったアメリカツアー、家族との関わりなど多くの体験を通して苦悩、葛藤し最終的に彼は「自身がなりたい自分を演じてしまえば良い」ということに気づきました。
これがジギー・スターダスト誕生のきっかけとなったのです。
全体を通しての感想
昨今、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」以降のミュージシャン伝記もの映画が流行っており、そのムーブメントの一部として制作されたのだと思います。
しかし「ボヘミアン・ラプソディ」のような華やかさを期待して鑑賞したところ予想とは違うものでした。ここが評価の分かれどころかもしれません。
私個人としては見ごたえのあるおもしろい映画でした。
私は後追いの世代だからか、または彼が様々なペルソナを演じるせいか、デビッド・ボウイがどんな人間なのかよく知らないでいました。
そんな中でこの映画を通して彼も人並みの感性をもっており苦悩してきたことを知り、親近感がわきました。
そして話は戻りますがこの「STARDUST」は「ボヘミアン・ラプソディ」のような起承転結のはっきりしたバンドの歴史を一通り感じることができるものでは無いのです。
「STARDUST」は対象的に終始「陰鬱な雰囲気」が流れているのです。
それもそのはずで、この作品は「ボヘミアン・ラプソディ」とは異なり、短い期間のスケールさらに深く、ボウイの苦悩した時期を切り抜いたものだからです。
そのためこの映画の魅力はミステリアスなデビッド・ボウイという人物の素顔が見れる点だと思います。
このようなマニアックな観点を持つからこそ万人受けはせず、デビッド・ボウイ好きが喜ぶ映画だと思いました。
また作中ではアンディー・ウォーホルやヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードが出てきたりと予備知識のある人にはたまらないシーンではあるが、デビッド・ボウイを全く知らない人が見てもよく分からないと思うのでそこも万人受けしない要素だろうと思います。
残念なことにボウイの曲が流れたり、演奏のシーンも少ないですがその分、人間の内面をディープに描いていると思いました。
そしてそれらの表現も直接的なものばかりではなく映画的な表現のされ方(テレビのチャンネルのノイズがキャラクターの心情を代弁していたりなど)もしており、そこも面白かったです。
繰り返しにはなりますが見る人は選びますが映画としては良質だと思います。
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